第269章

藤原邦達が脱獄した。これは洒落にならない。

島宮奈々未の胸も、きゅっと締め上げられる。「いつの話?」

「一時間前だ」丹羽光世はもう一度上着を手に取り、袖を通す。「一時間もあれば、藤原邦達は帝都の外まで逃げられる。奈々、先に寝てろ。俺はちょっと出る」

「こんな時間に、どこへ行くの?」島宮奈々未は嫌な予感で瞼がぴくぴくした。「藤原邦達が逃げたのなら警察の仕事よ。あなたは行かないで……胸騒ぎがするの」

「大丈夫だ。寝てろ」丹羽光世は島宮奈々未の額にそっと口づけし、それでも出て行った。

直感が告げていた。丹羽光世は、まだ何かを隠している。

その夜、島宮奈々未は寝返りばかり打って眠れない。...

ログインして続きを読む